サモン君だより11月
掲載日:2024.11.30
明日から12月、今年も残すところあと1ヶ月となりました。千歳水族館の館内外はきれいなイルミネーションツリーやサンタクロースなど、クリスマスムードに変わりました。サケの発眼卵を展示する恒例のグラスツリーも登場しています。これを楽しみにしている方も多いようで、展示前からいつから展示なのか問い合わせをいただき、展示後はテレビや新聞などで取り上げていただくなど、展示の中でも人気のあることが分かります。
生き物の生育環境はそれぞれ種によって違うので、水槽展示もそれぞれに合わせた環境を作ることが重要です。サケは冷水性の淡水魚で、川での自然産卵は湧き水の出る砂利の中で行われます。サケの人工ふ化事業はそうした生育環境を知り、授精卵はふ化槽に入れて地下水のかけ流しで管理されます。水族館や学校などの展示で地下水のかけ流しができない場合、水槽に冷却装置を取り付けて水温管理を行い、水回りの良い状態で飼育します。
グラスツリーは10年以上続いている展示です。当初「サケの発眼卵をシャンパンタワーのような形で展示したい」という話が出たとき、私自身きちんと卵を管理して展示できるとは思えませんでした。しかし、展示を担った職員は工夫しながら水槽を作り上げました。
現在グラスツリーは楕円形の水深の浅い水槽の中に、下からグラスをピラミッド状に積み重ね、水は一番上のグラスから順に下のグラスへ落ちる仕組みとなっています。水槽に落ちた水は冷却器とろ過装置を通ってグラスの頂上へと循環させています。グラスには発眼卵を3粒入れて展示します。
グラスの組立方法、段数、水回りについて、例えば現在6段グラスを積み上げていますが、中段から下段の一部グラスに止水のところが生じるため、細いホースを使ってそうしたグラスにも水が入るようにする、それでも止水になってしまうところには発眼卵を入れないなど、試行錯誤しながら改良を続けています。
本来なら卵は砂利の中であり、暗い状態で飼育するのがベターですが、展示で照明は必要です。グラスツリーが設置されている周辺は暗く、水槽はLEDでライトアップして、さらに幻想的で季節感ある展示となりました。
何でもそうですが、最初から「無理、できない」でなく、「できる、あきらめない」という気持ちが大事なのですね。こうした前向きな気持ちが、新たな展示を生む動力になるのだと思います。
グラスツリーは12月25日まで、その後は背景等を変えて「グラスタワー」として1月12日まで展示します。どうぞご覧ください。
【学芸員 荒金利佳】